top of page
  • TRIGGER FES

TRIGGER DISC REVIEW vol.10

こんにちは。

もうすっかり年の瀬ですね、2019年どんな年でしたか?


ド頭から少し重たい話になってしまいそうなので細かいことは省きますが、今年は音楽や自分の好きなものに対する違和感を感じる場面が多く、少し悩み込むことがありました。でも音楽があったからこそ軸となるようなものをよく見つめ直すことができた一年だったと思います。今回はそのきっかけにもなったアルバム、わたし的2019ベストの一枚を紹介したいと思います💃


DYGL / Songs of Innocence & Experience

7/3 release


 4人組ロックバンドDYGLが今年7月に2nd アルバム「Songs of Innocence & Experience」をリリース。DYGLが持つ枠のない多彩なサウンドが移住先のロンドンで更に磨かれ、挑戦的な音もかなり加わっているので、これまで以上に彼らの音に対するこだわりが感じられるアルバムだと思います。


今回のTRIGGER DISC REVIEWは、前述したようにアルバム、リリースツアーを通して感じたことを書いていきたいと思います。紹介レビューというよりかはただ思いが溢れた拙い文章ですが、最後までお付き合い頂けたらうれしいです。。また、読んでくださった方がDYGLの音楽を聴くきっかけになれば幸いです。


 

 先ずは1曲目「Hard To Love」。今いる空間を音で包み込んでいくような滑らかなフレーズ、決して重すぎず軽すぎないリズムとでまとめ上げられた音構造には初っ端から胸を打たれます。曲名通り愛することへの難しさをテーマに、心情の繊細さと複雑さ、変化を描いた楽曲。家族でも恋人でも友人でも近しい人だけでなく、人と深く関わることへの難しさを綴ったヒューマンソングであると思います。この曲のイントロを聴く度毎回嬉しくてたまらなくて、心がめくりあがりそうになる。。


 続いて軽やかで心地よいサウンドが耳いっぱいに広がる「A Paper Dream」。まだアルバム2曲目だというのにどんどん心踊らせられていくんです。何よりもそれを感じるのがメンバーが本当に心地よさそうに音を鳴らしている姿です。



「Paper Dream」は夢の歌というよりも、無垢の歌。


 イギリスの詩人、ウィリアム・ブレイクの詩集から拝借したという本アルバムのタイトル「Songs of Innocence & Experience」(邦題:「無垢と経験の歌」)。本曲は特にこのタイトルに深く関係しているそう。

実際に色んな事を経験していくうちに、自分の初期衝動の感情がどんどん見えなくなっていってしまい不安を感じる事は確かで、分かっていても情報社会の波に自分の考えや信念がのみ込まれてしまい、頭が混乱することもしばしば。この曲は、そういう時に自分が持っている''無垢''の感性がずっとブレずに軸としてあるということ、夢を持っていても持っていないにしろその感覚が何かしら導いてくれるということ、と立ち返るきっかけを与えてくれます。


 

 3曲目「Spit It Out」。耳を迷子にさせるようなギターサウンド、カーラジオで流れていそうなザラついたボーカルが印象的📻ぐるぐると渦巻くようなサイケっぽさは、楽曲の後半でどっしりとしたロック・サウンドとバトンタッチ。より一層熱を帯びた演奏でたちまち気持ちを高ぶらせる展開へと引き込んでいきます。これぞDYGLの一部だ、ある種のパワーだと思わせてくれる魅力が爆発しまくってる曲の一つです。



 4曲目は「An Ordinary Love」。大胆且つ渋~いギターからの始まりで、あまりのカッコよさに大きめのため息が出てしまいます。歌が本当に優しくてそれでいてうっとりと魅せられる艶っぽさも混在する曲。旋律的な美しさは言わずもがな、個人的に渋いサウンドはモノクロっぽさを感じますが、楽曲が進むにつれて彩りを感じました。特に終盤にかけてたくさんのアレンジが施されているので注目です。兎にも角にも中盤から加わるサックスとのバランスがグッドすぎる!続く5曲目「Only You (An Empty Room)」でも感じたのですが、音の響き方が前の3曲と全く違うように聞こえて、本当に同じアルバムか?と冗談抜きで一度再生画面を確認してしまいました笑 コーラス含め一つ一つの音との距離感が誠実にとられた楽曲だと思います。


 

「Bad Kicks」


  ゆったりめな曲が続いた中、ここで一気にパンチをきかせてくる曲順でさえも感動してしまいます。前のめりなビートが聴く人々の心を着火させ、燃え上がるような熱を放つ最高のナンバー。溜まったフラストレーションを代弁するかのような演奏で吹き飛ばしてくれるその爽快さは、痒い所に手が届くといったような感覚に近い。先にシングルとして「Hard To Love」とともにリリースされていましたが、本作では更に進化を遂げ、研ぎ澄まされた音の質感がアルバムの流れを掴んでいるようにも感じます。



ノイズ、雑味、無駄だと感じる事やモノも生きていく過程には必要だった。


この楽曲のテーマの一つとしてある''雑味''。インスタントに何でも手に入る、便利なサービスが普及しまくっている予定調和な世に対し、理屈に合う事だけが全てではない、無駄なものなんてないと歯切れの良いサウンドで真っ向から向き合う彼らの姿勢をめちゃくちゃ感じます。全くもってこの感覚を上手く言葉にできないのですが、ワクワクさせる風を呼び込んでくれる、それでいて強い味方のような存在です。


 

「Don’t You Wanna Dance In This Heaven?」


 もう何時何処で聴いてもこの曲の無敵さや完全無欠さには参ってしまいます。耽美なメロディーや繊細なビートの中に作り出されるうねり、好きなところを上げたらキリがないのですが、音数が足されていく度に高揚感がじわじわと押し寄せてきます。今年のフジロックで聴いた時、旋毛から爪先まで鳥肌がたって終わってもしばらくは放心状態でした🧠

余談になってしまいますが、自分にとってフジロックで彼らを観るということに本当に意味があったというか、特別でした。高校生の時から憧れの地だったフジロックで憧れの人たちをみることができたことが本当にうれしかった。豪雨で超過酷でしたが、間違いなく今年のハイライトです☔



‘’こうなったらいいなといつかの「天国」を思い浮かべるのではなく、今が来るべき「天国」だと思ってやってみればいい’’


こうなったらいいなは今しか言えない。彼らの眩しいくらいのまっすぐなアプローチに何度救われたことだろうか。この言葉を聞いた時、DYGLの音楽、そして愛する人たちと一緒にこの先の新しい時代をもっと見たいと心から思いました。世界中で格差や分断、深刻な問題が毎日のように起きている現状に対し、自分一人ではどうしようもなくて何もできないかもしれないけれど、考えても仕方がないからってそのまま無いように無いようにと世の中が動いているように感じる、とVo.秋山さんの心中にあるつっかえや不安、蟠りをベースに綴られた本曲。初めてこの曲を聴いた時も、心の奥底から何か訴えかけられるようなメッセージを凄く感じました。



〈We’re all living in our ‘’No Tomorrow’’ / We’re born naked, there’s nothing to lose, yeah

- 俺たちはみな 明日なき明日を生きている / 裸で生まれた 俺たちには 失うものなんかないのさ〉


飛び交う音とオーディエンスたちの熱。思い思いのリズムにのってただ音楽を楽しむという事だけに神経を集中させてくれる自由なライブ空間には毎度感銘を受けるのですが、DYGLが生み出していく直向きなグルーヴだからこそ 楽曲だけでなく会場にいる一人ひとりに衝動を持たせてくれるのだと思います。そんな彼らの意思や姿勢、いつまでも信じ続けたい音に共鳴した人たちが一体となってその時間を作り上げていくのが好きです。音楽はもちろん好きだけどそういった時間がどれだけ尊いことなのか、クラスで意地悪してるやつにこんなにも素晴らしい時間があるんだっていうことは教えたくない。(そんなやつはいない)


 

 バチバチのロックが続いた後に、これでもかとアルバムのスケール感を見せてくれるとっておきの曲「As She Knows」。休日の穏やかな昼下がり、自転車に乗って川沿いの道を永遠に漕いでいたくなるような気分を味合わせてくれます🚲懐こいメロやテンポは個人的には常夏のあたたかい雰囲気、サーフっぽさも彷彿とさせるので海沿いにも合うと思います。


 9曲目は、初期からライブでも演奏されてきた「Nashville」。満を持して今回のアルバムに収録されております、うれしい!胸がきゅっとなる叙情的な詞からも感じられるように、ドラマチックな魅力がこの5:27には詰まっています。良い意味で抜けのあるボーカルと音のみせ方が圧倒的に素晴らしすぎて、本当に永遠に聴いていられる。ライブになると音も際立つので、幻想的なサウンドの中にもロックの鋭さをちゃんと感じさせてくれます。なんというバランス...。ステージから放たれていく音がキラキラとした川面の柔らかい光のようで、恍惚感で包み込まれていくのを感じます。


アルバムのラストを飾るのは「Behind the Sun」。ポップで愛らしい、普段は見せないようなラフっぽさがまた新鮮で、終わりを感じさせないこの幸福感でずっと満たされたい。。これから先への期待も益々膨らむエンドです。



「Songs of Innocence & Experience」

リアルな想いを音に宿らせた彼らの意思表示のような作品だと思います。これまた筆舌に尽くし難いのですが、このアルバムはつくられたというよりかは彼らの信念一つ一つが自然と形となって現れたような気もします。

''今''にフォーカスし続け、現実と確と向き合うからこそ生まれる彼らのまっすぐな音楽が一人でも多くの方に伝わって欲しいと心から願います。今年も残すところあと僅かですが、ぜひ聴いて頂きたい一枚です💿



 

最後になりますが、今年一年TRIGGER FESに関わってくださった皆さま、本当にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い致します。

良いお年をお迎えください🎍


📷Text&Photo by erk.k

※アルバムジャケットはアーティストOfficial HPより


0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page